いじめ防止等基本方針

平成27年1月
奈井江町教育委員会 

はじめに

 いじめは、いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、心身の健全な成長や人格形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な影響を生じさせるおそれがあり、決して許されるものではない。
 いじめは全ての児童生徒に関する問題であり、いじめの芽はどの児童生徒にも生じ得るということを十分に認識する必要がある。
 また、いじめの問題への対応力は、我が国の教育力と国民の成熟度の指標であり、児童生徒が接するメディアやインターネットを含め、他人の弱みを笑いものにしたり、暴力を肯定していると受け取られるような行為を容認したり、異質な他者を差別したりといった大人の振る舞いが影響を与えているという指摘もある。
 本町においては、これまでも、教育委員会、家庭、各学校においていじめの未然防止、早期発見・早期対応など、いじめ根絶を目指して様々な取組みを進めてきた。
 このたび、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)第12条の規定に基づき、いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処(以下「いじめの防止等」という。)のための対策を総合的かつ効果的に推進するため、奈井江町いじめ防止等基本方針(以下「町基本方針」という。)を策定する。

いじめの防止等に関する基本的な考え方

(1)いじめ防止等の対策に関する基本理念

 いじめは全ての児童生徒に関係する問題であることから、児童生徒一人一人が、元気で明るく学び、健やかに成長していくことができるよう、次のとおり基本理念を定め、いじめ防止等に向けた取組を進める。
1 いじめの芽はどの児童生徒にも生じ得るという緊張感を持ち、児童生徒が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨として行わなければならない。
2 全ての児童生徒がいじめを行うことがなく、そしていじめの傍観者とならぬよう、いじめが心身に深刻な影響を及ぼす許されない行為であることを、児童生徒が十分に理解できるようにすることを旨として行わなければならない。
3 いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童生徒の生命及び心身を保護することが最も重要であることを認識し、町、学校、地域、家庭、関係機関の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行わなければならない。

(2)いじめの定義

 「いじめ」とは、児童生徒に対して、当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものをいう。具体的ないじめの態様としては、次のようなものがある。
  • 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる
  • 仲間はずれ、集団による無視をされる
  • 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする
  • ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする
  • 金品をたかられる
  • 金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする
  • 嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
  • パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる等

(3)いじめの未然防止

  1. いじめの問題をより根本的に克服していくためには、「いじめはどの子どもにも、どの学校でもおこりうるもの」との認識を持って、全ての児童生徒を対象とした、いじめの未然防止に取り組むことが何よりも重要である。
  2. 全ての児童生徒を、いじめに向かわせることなく、心の通う対人関係を構築できる社会性のある大人へと育み、いじめを生まない土壌をつくっていくためには、教職員をはじめ関係者による一体となった継続的な取組が必要である。
  3. 学校の教育活動全体を通じ、児童生徒の豊かな情操や道徳心、自分の存在と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重し合える態度など、心の通う人間関係を構築するための素地を養うことが必要である。
  4. いじめの背景にあるストレス等の要因に着目し、その改善を図り、ストレスに適切に対処できる力を育む観点が必要である。
  5. 全ての児童生徒が安心でき、自己有用感や自己肯定感を感じられる学校生活づくりも未然防止の観点から重要である。そのため、家庭・地域と一体となって取組を推進することが必要である。

(4)いじめの早期発見

  1. いじめは、早期に発見することで早期解消につながることから、教職員をはじめ、児童生徒に関わる全ての大人が連携し、児童生徒のささいな変化にも気付き対応していくことが大切である。
  2. いじめは大人の目に付きにくい時間や場所で行われたり、遊びやふざけあいを装って行われたりするなど、大人が気付きにくく判断しにくい形で行われることを認識することが重要である。ささいな兆候であっても、いじめではないかとの疑いを持って、早い段階から的確に関わりを持ち、積極的にいじめを認知することが必要である。
  3. いじめの早期発見のため、定期的なアンケート調査や教育相談の実施、電話相談窓口の周知等により、児童生徒や保護者がいじめについて相談しやすい体制を整えるとともに、家庭・地域と連携して児童生徒を見守ることが必要である。

(5)いじめの早期対応

  1. いじめがあることが確認された場合、学校は、いじめを受けた児童生徒やいじめを知らせてきた児童生徒の安全を最優先に確保し、いじめたとされる児童生徒や周囲の児童生徒に対して事情を確認した上で、適切に指導を進める等の対応を、迅速かつ組織的に行うことが必要である。また、家庭や教育委員会への連絡・相談や事案に応じ関係機関との連携が必要である。
  2. 教職員は普段より、いじめを把握した場合の対処の在り方について、理解を深めておくことが必要である。また、学校における組織的な対応を可能とするような体制を整備しておくことが大切である。

(6)学校・家庭・地域・関係機関との連携

  1. 地域全体で児童生徒を見守り、健やかな成長を促すためには、学校と家庭・地域・関係機関との連携が必要である。
  2. 子どもの教育については、保護者の責任が最も大きい。規範意識など養うための指導等をより適切に行うためには、地域を含めた家庭との連携の強化が重要である。また、PTAや地域の関係団体等と学校とが、いじめの問題も含めた児童生徒の現状について共通理解に立ち、連携し協働で取り組むように努めることが必要である。
  3. 児童生徒が日頃から、異なる年齢を含めた他の児童生徒や大人と関わることにより、いじめの未然防止や早期発見につながる場合もあることから、地域の取組などに参加する機会をつくることも重要である。
  4. 学校や教育委員会において、いじめに関係した児童生徒に対して、必要な教育上の指導を行っているにも関わらず、その指導により十分な効果を上げることが困難な場合などには、警察や児童相談所等の関係機関との適切な連携が必要である。

 また、日頃から学校や教育委員会と関係機関の担当者間での情報交換や連絡会議の開催など、情報共有体制を構築しておくが重要である。

いじめ防止等のために町が実施する施策

(1)いじめ基本方針の策定と組織の設置等

  1. いじめ基本方針の策定及び見直しいじめ防止対策推進法第12に基づき、いじめ防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するため、「町基本方針」を策定する。定期的に点検し、必要に応じて内容の見直しを行うこととする。
  2. 組織の設置等
(1)いじめ問題対策連絡協議会いじめ防止推進法第14条第1項に基づく「いじめ問題対策連絡協議会」の設置について、奈井江町では、「奈井江町青少年問題協議会」をもってこれに充て、いじめの防止等に関係する機関及び団体との連携を図る。
(2)いじめ防止対策推進法第14条第3項に規定する教育委員会の附属機関
 ア いじめ防止対策推進法第14条第3項に基づき、教育委員会と「奈井江町青少年問題協議会」との円滑な連携の下に、「町基本方針」に基づくいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするため、教育委員会の附属機関の設置について、奈井江町では「子どもの権利に関する条例」に基づく「奈井江町救済委員会」(以下「町救済委員会」という。)をこれに充て、必要に応じて調査を行うほか、いじめ防止等のための調査研究や、第三者機関として当事者間の関係を調整するなど問題の解決を図る。
 イ 町救済委員会は、いじめ防止対策推進法第28条第1項に基づき、いじめの重大事態が発生した場合の調査組織を兼ねるものとし、組織の構成も調査を前提として、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者等で構成することを基本とする。また、公平性・ 中立性の確保に努め、その事態の対処及び今後の発生の防止に資するため、事実関係を明確にするための調査を行う。

(2)教育委員会が取り組む施策

  1. いじめ未然防止
(1)児童生徒や保護者、教職員の悩みや不安を解消するため、専門的知識を有するスクールカウンセラーによる町内全域を対象とする教育相談を実施し、相談しやすい体制の充実を図る。
(2)いじめ防止に向けての、各学校における児童会及び生徒会活動等の自主的な企画及び運営による取組みの支援に努める。
(3)「奈井江町子どもの権利に関する条例」に基づき、命の大切さ、他人への思いやりの心など、児童生徒の人権意識の向上を図るため各学校において実施する人権に関わる学習を支援する。
(4)児童生徒の豊かな情操と道徳心を培い、自分と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重し合える態度などの育成を全ての教育活動を通じた、道徳教育及び体験学習等を推進する。
(5)各学校におけるいじめの実態把握及び防止等のための教育相談の在り方や対応力などの充実を図るため、各学校における校内研修の充実への働きかけ行う。

(3)いじめの早期発見

  1. いじめの実態把握や早期発見、早期対応等を図るため、町内小中学校の児童生徒に対し、北海道教育委員会が定期的に年2回実施する、いじめアンケート調査を実施する。
  2. ​スクールカウンセラーを配置し、いじめの早期発見に努める。
  3. インターネットを通じて行われるいじめ対策として、北海道教育委員会が実施するネットパトロールの情報を活用する。

(4)いじめの早期対応

  1. 町基本方針を踏まえ、学校に対して、いじめの早期解消に向けた迅速な対 応等に関し、必要な指導・助言を行う。
  2. いじめが発生した場合には、聴き取りやアンケートによる調査、教育委員会の附属機関を活用した調査等を行うとともに、学校と連携・協力して、いじめの解消に向けた迅速な対応を進める。
  3. いじめを受けた児童生徒やその他の児童生徒が安心して教育を受けられるようにするため、教育上必要があると認めるときは、教育的配慮に十分に留意し、出席停止を命ずる等、適切な対応に努める。

いじめ防止等のために学校が実施する施策

(1)学校いじめ基本方針の策定

 各学校は、法第13条の規定に基づいて、国及び北海道、町基本方針を参考に実情に応じて、自校におけるいじめ防止等の取組みについて、校内組織の在り方、基本的な考え方、取組みの内容等について、「学校いじめ防止基本方針」(以下「学校基本方針」という。)を策定し、公表するとともに、より実効性の高い取組みとするため、定期的に点検し、必要に応じて内容の見直しを行う。

(2)学校におけるいじめ防止等の対策のための組織

 各学校は、法第22条に基づいて、いじめ防止等に関する措置を実効的に行うため、既存組織の活用を図るなど、いじめに関する対策委員会を設置する。当該組織は、校長、教頭、生徒指導担当教諭、学年主任、学級担任等の複数の教職員や外部有識者などによって組織し、いじめ防止等への組織的対応の中核として機能するよう、校長、教頭、生徒指導担当教諭等の複数の教職員や外部有識者などによって組織し、いじめ防止等への組織的対応の中核として機能するよう、校長が学校の実情に応じて定めるものとする。

(3)学校におけるいじめ防止等に関する取組

1.いじめの未然防止
いじめは、「どの学校、どの子どもにも起こり得る」、「どの子どもも被害者にも加害者にもなり得る」という認識に立ち、全ての教職員の共通理解のもといじめ防止等に取組む。

(1)いじめの態様や特質、原因・背景、具体的な指導上の留意点などについて校内研修を行い、いじめの対応力の向上と生徒指導体制の充実を図るとともに、児童生徒に対し全校集会や学級活動などで、「いじめは絶対に許されない」ことの指導を徹底する。
(2)教育活動全体を通じて相手の気持ちを考え、思いやることの大切さを学ぶ人権教育や道徳教育の充実、児童等一人一人が自己有用感、自己肯定感を感じられるよう、分かりやすい授業づくりや集団づくりに努める。
​2.いじめの早期発見
いじめについて、ささいな変化であっても、いじめではないかとの疑いを持ち早い段階から複数の教職員で関わり、隠したり軽視することなく、積極的に認知する。
(1)北海道教育委員会によるいじめのアンケート調査を全児童生徒等に実施するほか、適宜、学校独自の調査を実施する。
(2)全教職員で日常的な観察を行い、必要に応じて教職員やスクールカウンセラーによる教育相談を実施する。
(3)インターネットを通じて行われるいじめへの対策として、北海道教育委員会が実施するネットパトロールを活用し、不適切な書き込み等を発見した際は、削除の依頼等、関係機関と連携・協力し適切な対応を図る。
3.いじめの早期対応
(1)いじめの発見や通報を受けた場合は、直ちに校長へ報告するとともに、組織的に対応する。
(2)いじめられた児童生徒やいじめを知らせてきた児童生徒を守り通すとともに加害児童生徒には、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導する。
(3)いじめの疑いや訴えがあった場合には、いじめに関する対策委員会が速やかに関係児童生徒から事情を聴きとる。
(4)事実確認の結果は、遅滞なく、校長が責任を持って教育委員会に報告するとともに、被害側・加害側児童生徒の保護者に連絡し、解決に向けた学校の取組などに理解と協力を求める。
(5)いじめの状況が犯罪行為と判断される場合には、必要に応じて児童相談所、警察等の支援を求める。

重大事態への対処

(1)重大事態の発生と調査

  1. 重大事態の定義 法第28条第1項において、次に掲げる場合をいじめの重大事態としている。
(1)いじめにより当該学校に在籍する児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
○「生命、心身又は財産に重大な被害」については、いじめを受ける児童生徒の状況に着目して判断し、例えば、自殺や重大な傷害、金品等の重大な被害、精神性の疾患の発症などを想定。
(2)いじめにより当該学校に在籍する児童生徒が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている場合。
○「相当の期間」については、文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における不登校の定義を踏まえ、年間30日を目安とする。

2.重大事態の報告学校は、重大事態が発生した場合は、直ちに教育委員会へ報告する。報告を受けた教育委員会は、速やかに、町長へ事態発生について報告する。

3.調査の趣旨及び調査主体法第28条の調査は、重大事態に対処するとともに、同種の事態の発生の防止に資するために行う。調査の主体は、学校又は教育委員会が行うこととし、事案の特性等を踏まえ、その判断は教育委員会が行う。

4.調査を行う組織 調査を行う組織は、学校にあっては、いじめに関する対策委員会が、教育委員会にあっては、町救済委員会が行う。

5.事実関係を明確にするための調査の実施事実関係を明確にするとは、重大事事態に至る要因となったいじめ行為が、「いつ、誰から行われ、どのような態様であったのか、いじめを生んだ背景事情や児童生徒の人間関係にどのような問題があったか、学校や教職員がどのように対応したかなど」の事実関係を、可能な限り網羅的に明確にすること。

6.調査結果の提供及び報告 教育委員会又は学校は、いじめを受けた児童生徒やその保護者に対して、調査により明らかになった事実について説明するとともに、町長へ報告する。

(2)調査結果の報告を受けた町長による再調査及び措置

 いじめに係る重大事態の調査結果の報告を受けた町長は、必要があると認めたときは、再調査を行うことができる。町長が再調査を行った場合は、その結果を町議会に報告しなければならない。
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