子どもの権利に関する条例制定の背景等

はじめに

 平成14年3月定例会において、「子どもの権利に関する条例」が成立しました。
 この条例は、町民の参画で条例案が企画・立案された点で本町にとって始めての試みであり、町民と共にまちづくりを推進する上で、大きな支えになるものと考えています。
 条例制定の背景等の概要について下記にまとめています。

1.条例制定の背景

 子どもは、個性が認められ、喜びや悲しみを共有できる家族や友達の温もりの中で健やかに遊び、学び、生きることを願っています。そのことは、子どもが一人の人間として温かい情、やろうとする意欲、豊かな創造性を持ち続け、最も人間らしい生き方の基礎・基本を培うことにつながります。このことを前提として、平成12年3月に「青少年健全育成の町宣言」を行いましたが、これをさらに具体化した条例制定に向け着手しました。
 基本的な方針は次の4点であります。

(1)奈井江町における子どもの権利の総合的な保障

 大人の子どもに対する考え方は、「保護・育成の対象」と捉えていました。国連採択の「子どもの権利条約」では、子どもを一人の権利主体と捉え、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」に要約される「子どもの権利」を保障しています。そして、大人は子どもにとって最善の利益を第一に考えることをうたっています。また、子ども同士が同様に「子どもの権利」があることを共通理解していくことも不可欠であります。
 この取り組みは、子どもの自主的・自立的態度を育成し、社会参加が日常的なことと認識し、それに伴う責任と自覚が育成され、子どもを含めたまちづくりを実現することに繋がります。

(2)子どもと大人と行政関係者の協働

 核家族化や生活様式の多様化は、家族の団欒の減少、絆の希薄化を招いています。
 子どもの人格の形成には、第一義的責任を持つ保護者及び家庭の果たす役割は大きなものがあります。特に基本的な生活習慣、善悪の判断、社会ルールなどの道徳観を身をもって示すことが大切であり、家庭の教育力の向上が重要な課題であります。また、子どもの成長による行動範囲の拡大に伴い、子育てを社会全体で担うべく家庭・学校・地域のさらなる向上と連携が求められています。
 これからは、子どもの目線で三者の連携を考えたり、従属関係で見がちだった子どもを大人の良きパートナーとして子どもを見ることが大切であります。この意識の変革は、子どもと大人と行政関係者の協働による地道な取り組みが必要であります。
 子どもの斬新な意見や発想を可能な限り取り入れることが、大人と子どもが互いに協働する姿勢を生むことに繋がります。

(3)町民参加の条例づくり

 町民参加のまちづくりを推進しており、本条例策定に向け多くの町民の参加を得ながら、実効のある条例を目指しています。

(4)子どもが参加するまちづくり

 子どもの発想は、幼くても隙だらけでもまず受け止めること。やってみる機会や場を与えることで、地域(社会)を知り、親を知り、自分を知ることに繋がり、迷っていた自分の目標を得たり、生きる活力を得ることになります。

2.条例制定までの経緯

 町民による条例策定を主眼に「子どもの権利検討連絡会議」を立ち上げました。また、行政も一体的となって全町体制で取り組むため奈井江町行政連絡協議会(課長職)での連携や多くの町民の意見を取り入れるため従前から実施している「町長に手紙を出す運動」、主な公共施設にこの条例策定に向け種々意見等を寄せてもらうために「意見箱」を設置、各種会合時の呼びかけ等、全町的な取り組みを展開しました。

(1)子どもの権利検討連絡会議

 学識経験者、学校関係者、関係団体、町民(公募)等から選出しました。自らも子どもの権利について研修を積まれると共に子どもの意識調査、各学校訪問での意見交換を実施しました。
素案のまとめ作業を起草小委員会が担当し、子ども小委員会もこれに加わり、大人と子どもたちによる素案がまとめられ、平成14年1月に町長に答申されました。

(2)委員会開催状況

開催日開催内容備考
平成13年7月3日子どもの権利検討連絡会議(第1回) 
平成13年7月12日座長・副座長会議(第1回) 
平成13年7月19日子どもの権利検討連絡会議(第2回) 
平成13年8月2日子どもの権利検討連絡会議(第3回)講師:岩見沢児童相談所所長
平成13年8月23日アンケート集約委員会(第1回) 
平成13年9月3日アンケート集約委員会(第2回) 
平成13年9月7日アンケート集約委員会(第3回) 
平成13年9月12日町長と語る会(奈井江小学校・奈井江商業高等学校) 
平成13年9月13日町長と語る会(江南小学校・奈井江中学校) 
平成13年9月28日子どもの権利検討連絡会議(第4回) 
平成13年10月29日座長・副座長会議(第2回) 
平成13年11月9日起草小委員会(第1回) 
平成13年11月21日起草小委員会(第2回) 
平成13年12月1日起草小委員会・子ども小委員会合同会議(第1回) 
平成13年12月22日起草小委員会・子ども小委員会合同会議(第2回) 
平成13年12月26日子どもの権利検討連絡会議(第5回) 
平成14年1月9日起草小委員会(第3回) 
平成14年1月19日起草小委員会・子ども小委員会合同会議(第3回) 
平成14年1月22日子どもの権利検討連絡会議(第6回)町に答申
平成14年2月18日子どもサミット 

3.条例の概要

(1)条例の構成

 条例の構成は、前文で子どもの権利の必要性と内容、町及び町民の役割や大人と子どもの関わり等について基本的な考え方を示し、4つの基本理念(第3条)を掲げ、子どもの権利保障を大きく4つに分け「生きる権利」(第6条)、「育つ権利」(第7条)、「守られる権利」(第8条)、「参加する権利」(第9条)とし、各々4項目の内容でまとめ、これらを補完する条文で構成しています。

(2)各条の概要

 第1条では、奈井江町で育つ子どもの権利を保障し、幸福に暮らせるまちづくりを進めることを目的とし、第2条で子どもは18才未満のすべての者を対象としている。町の役割(第4条)、町民の役割(第5条)、子どもの成育環境の保全(第10条)、子育て支援(第11条)、学校・幼稚園・保育所(第12条)、子どもの社会参加(第13条)、子どもの活動や町民活動の支援(第14条)、相互支援(第15条)、救済(第16条)、推進体制(第17条)の補完条文から成り立っています。

(3)子ども会議の設置

 第13条の「子どもの社会参加」の条文中に、子ども会議の設置をうたっており、本条例の適正運用の点検・評価と行政・まちづくりや子どもの生活環境の発展・改善に対して子どもの視点から検証し、子どもの創造力を生かした施策にすることを狙いとして設置しました。

(4)救済委員会の設置

 救済委員会は、既存の各種委員等の構成で、子どもがいじめや虐待により子どもの権利を侵害するなどの不利益を受けた場合に、適切にかつ迅速に対応し、救済を図るために設置しました。

4.おわりに

 町民参加による初めての条文作成であり、当初は「子どもの権利条例がなぜ必要なのか」等、疑問を抱く委員が多かったが、会議を重ねる内に「みんなで学習しよう」と考え方が変わりました。飾りの条例ではなく、「みんなに支持(理解)され、実効のある条例にしよう」という気持ちがこの条例となりました。また、子どもたちにわかりやすい条例にしようという発想もあったため、子ども用の条文も作成しました。
 連絡会議にご参加いただいた委員のみなさんの思いが子どもたちにも伝わり、これから大人と子どもの協働のまちづくりが始まることと思われます。まちづくりは人づくりとも言われます。次代を担う子どもたちに目を向け、パートナーとして認めてあげることが子どもたちの自立を促していくことと考えます。
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